第1部 通学交通の特徴


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第1章 (1)新潟市の事例

この章では各地の通学交通の現状をありのままにみていく。 まず最初に新潟市の通学交通の現状を新潟高校を例にみていくことにする。

1. 新潟高校について

学校は新潟市のほぼ中心部に位置し、古町という繁華街から2キロほど西へ行った住宅地の中にある。 学校のすぐ前に新潟交通の新潟高校前バス停がある。 西新潟方面のバスおよび新潟駅方面のバスが発車する。 また、学校から15分ほど歩いたところにJR越後線の白山駅があり、同じく西新潟方面と新潟駅方面に路線をのばしている。

2. 学区について

現在新潟高校を含む学区(第3学区)は、新潟市、亀田町、横越町、味方村の1市2町1村であり、 学区は比較的狭い方であると思われる。 4市町村あわせた面積は東京23区の約半分である。 2002(平成14)年現在の推計人口(国勢調査による)は、 新潟市が52万9627人、亀田町3万2170人、横越町1万1056人、味方村4765人で、新潟市の人口が圧倒的に多い。 よって、その年によって多少の変化はあるだろうが、概ね8〜9割の学生は新潟市内から通学している。 新潟市外から通学する学生は少ないが、全校では少なくととも100人以上はおり、無視することはできない数である。 また、隣接学区からの通学も制限付きで認められているので、 ごく一部、白根市や西川町などといった周辺市町村からの通学も見られる。

市町村名 読み方 面積
(km²)
人口
(人)
年齢別人口(人)
15歳 16歳 17歳 18歳
新潟市 にいがた 231.91 529,627 5,626 5,635 6,009 6,110
中蒲原郡亀田町 かめだ 16.82 32,170 366 396 374 398
中蒲原郡横越町 よこごし 23.62 11,056 160 166 160 138
西蒲原郡味方村 あじかた 14.44 4,765 54 66 54 65
286.79 577,618 6,206 6,263 6,597 6,711

表1−1−1 第3学区の面積と推計人口(2002年1月1日現在)
(新潟県の統計データより)

3. 通学の現状

このように学区が比較的狭いことから、通学距離はそれほど長くならない。 ほとんどの学生が学校から半径10キロメートル内から通学している。

では、通学時間はというと、片道30分〜1時間という学生の割合がもっとも多い。 通学時間が片道1時間を越える学生はごく一部である。

学校への通学方法は大きく分けて、鉄道、バス、自転車の3つがあり、いずれも大きな勢力である。 徒歩もいるが、それほど割合は多くない。 近距離ならバス通学、遠距離なら鉄道通学というように、一般的に言われるようなことは特にない。

(1) 鉄道通学

学校の最寄り駅であるJR白山駅へ向かう鉄道路線はJR越後線、信越線、白新線の3線である。 この中でも特に越後線で通学する人が多い。 午前8時から30分間に白山駅に到着する列車は上下それぞれ3本ずつあり、どの列車も混雑している。 白山駅周辺には高校がいくつもあり、新潟高校以外の学生も大勢降りる。 そのうえ、線路が単線で上下線両方の列車が同時に到着する場合が多いので、改札口へ向かう通路はたいへん混雑する。 なお、新潟地区のJR線は土曜日も平日ダイヤで運転をしている。 これは学生の通学に配慮したものだろう。 鉄道はバスより定時性が保証されていて、通学費が安いのが魅力である。 鉄道で通学する人の多くは駅の近くに住んでいる。 速達性については、渋滞地点を除けばバスもけっこう速いので、たとえ遠距離通学でも駅から遠ざかるとバスに軍配が上がる。 また、駅の近くに住んでいる人でもあえてバスで来る人もいる。 これは、バスが数分おきという高頻度運行をしているのに対し、鉄道は本数が少ないのが原因である。 また、学校が駅から離れているのも影響している。

なお、1999(平成11)年までJR以外に新潟交通も電車を運行していて、それで通学していた人もいたが、 廃止後は新潟交通の代替バスで通学している。 電車時代より若干所要時間は延びたが、停留所が増え、電車時代よりも学校の近くまで運転されるようになったため、 それほど目立った変化はない。

(2) バス通学

新潟市内及びその近郊はバス路線が充実している。 市内の路線バスは新潟交通1社のみである。 バスは概ね本数も多く、市街ではほとんど待たずにバスに乗ることができる。 郊外線でも一部の幹線では午前7時台に20本以上運行している。 しかも学校のすぐ前にバス停があるため、バスで通学する人は多い。 西新潟方面へは新潟高校前バス停から直行便があるが、東新潟方面や駅南方面は直行がないので、 バス同士(郊外線・市内線)を乗り継いで通学する人が多い。

朝の登校時間帯にはバスは高校生を中心にして大混雑する。 中には積み残しの出るバスもある。 なお、新潟交通は昨年まで、平日ダイヤ、第1・3・5土曜ダイヤ、第2・4土曜・休日ダイヤの3種類のダイヤがあった。 今年度から平日ダイヤ、土休日ダイヤの2種類に変更されたが、今年度から始まった学校完全週5日制により、 土曜日の朝の乗客が激減したからであると思われる。 いかにバス通学をする学生が多いかを示している。 ただ、ここ10年来、乗客が減ったせいか、全体的にバスの本数は減る傾向にある。

バスは鉄道より路線網がきめ細やかで本数も多いため便利であるが、所要時間を考えると自転車に軍配が上がることがある。 通学時間の長い人というのはたいていバス通学である。 渋滞するのは市街地へ通じる道路のわりと短区間に限られるのだが、その短区間を抜けるのに時間がかかってしまう。 車社会のため、自家用車で通勤する人が非常に多く、道路混雑は激しい。 通学時、行きと帰りで所要時間が大きく異なる人もいる。 また、冬の積雪時、特に初めて雪の積もった日には道路は大渋滞し、 もっともひどい時には1時間以上バスの到着が遅れることもある(ここまでひどいのは年に1度くらいしかないが)。 道路の除雪さえ済めばバスは普段どおりの運転になる。

また、新潟特有の通学手段として、高速バスが挙げられる。 特に北陸自動車道は高速バス網が発達している。 高速道路上にもバス停があり、新潟にもっとも近い鳥原(とっぱら)バス停(新潟市)では、 通学に最適な午前7時30分以降の30分間で10本ものバスが停車する。 高速バス通学をする人の多くはこのバス停から乗ってくる。 鳥原バス停から、学校にもっとも近いがんセンター前バス停(JR白山駅より少し遠いくらい) までの時刻表上の所要時間は17分である。 一般にバスは鉄道より時間がかかるとされるが、高速バスは停留所も少なく、 高速道路上では渋滞もなく鉄道以上に速く移動でき、たいへん便利である。

(3) 自転車、バイク通学

学校からおよそ5キロメートル以内の人では自転車通学の割合が高い。 新潟は東京などに比べると自転車で走りやすい道路が多く、学校まで5キロメートル以上離れていても自転車で通学する人は多い。 特に、沿線に鉄道や高速バスがない地域では、遠距離の自転車通学が目立つ。 これは、例え遠距離であっても、交通手段の不備や、渋滞によるバスの遅れ、あるいは高い通学費を嫌っているがためである。 なお、雨天時にはバス通学に切り替える人が多いので、雨天時のバスは普段より混雑する。 また、冬期は雪や雨の日が多く、積雪時には路面の状態がたいへん悪くなるので、多くの人がバス通学に切り替える。 新潟交通ではバスカードを発売していて、自転車通学の人はバスカードをよく使う。 冬の中でも特に1月は晴れている日がほとんどないため、最初から自転車通学をあきらめ、バス通学にする人も出てくる。 そのため、冬期のみ定期券で通学する人もいる。

また、新潟高校では通学距離が片道8キロメートルを超える学生に対し、バイク通学を認めている。 このため、鉄道、バスともに不便な地域の学生でまれにバイク通学が見られる。

4. 通学費の実態

最後に、通学費についても言及する。 鉄道で通学する人の場合、例えば1ヶ月定期なら、内野〜白山5120円、亀田〜白山4410円と、大半の人は1ヶ月5000円以内で済む。 学区内ではもっとも遠い越後線越後赤塚駅(新潟市)からだと6590円である(学区内で6000円を超えるのは唯一この駅のみ)。

一方、バスの1ヶ月定期は鉄道とは逆に安くても5000円を超える。 1ヶ月1万円以内で済むのは180円均一区間とその周辺に限られる。 学校まで10キロも離れると1万円を軽く超える。ちなみに360円区間の場合、1ヶ月定期の価格は12960円である。 これはバス事業者としては標準的な価格である。 よって、バス通学の場合、定期代が1ヶ月1万円を超える人も目立つ。 現在新潟近郊のバスは上限運賃を600円に設定しているので、定期券が1ヶ月2万円を超えるケースはほとんどないと思われる。

注)新潟交通の上限運賃は2003(平成15)年3月末までの試験運用。来年4月以降継続するかは未定。


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Last modified:2008/9/23

一橋大学鉄道研究会 ikkyotekken@yahoo.co.jp