はじめに

この文書に関する一切の権利は一橋大学鉄道研究会が保有します。 無断複製・転載を禁じます。


今回の研究テーマは「通学と交通」です。 例年の研究に比べ、より身近に感じられるテーマでしょう。 もし読者が学生の方であればまさに現在のことであり、元学生の方であれば過去のことではありますが、 多くの方がご自分の経験に基づいて考えることのできる題材であると思います。 今回の研究誌は、みなさんの通学経験と比較しながら読んでいただくのもよいかと思います。

さて、みなさんは高校時代、あるいは中学時代、学校までどのようにして通学されていたでしょうか。 中学校ですと徒歩または自転車による通学が多かったでしょうか? 高校に入るとバスや鉄道といった公共交通を利用しての通学が多かったでしょうか? 今回はこの通学における交通手段について考えていきたいと思います。

ところが、通学に特化した調査はこれまであまりなされていないことがわかりました。 多くの調査は、通学と通勤を区別せずに行われています。通学する学生の立場から見た調査はあまりなされていませんでした。 公共交通が廃止される時になって、通学交通の問題がようやく取り上げられます。 公共交通が廃止されるときに、事業者側の視点で書かれたものは多いですが、学生の視点で書かれたものは少ないです。

よって今回の研究では通学する学生の立場から通学交通事情を探っていくことにしました。 通学交通の現状把握が重要であると捉え、これを最重点に置きました。 そのため、例年より話が具体的で、かつ事例も多くなっています。

第1部では通学交通の特徴を考えていきます。 まず第1章では、部員の出身高校がある新潟県新潟市、山形県米沢市、茨城県つくば市の3か所を挙げて、 それぞれの地域での通学の実態を把握します。 この3か所は、モデル地域のような特殊な地域ではなく、いずれもごく一般的な地域を3か所取り上げただけです。 それでも、地域によって通学事情が大きく異なっていることがわかると思います。 第2章ではこれを受けて通学交通の特徴を述べていきます。 第3章では、モード(交通手段)別に分けて、通学交通の特徴を述べていきます。 ここで、同じ移動でも、通勤や買い物とはずいぶん様相が異なってくることに気付きます。 なお、輸送モードの中で、スクールバスについては他の交通手段とは様相が異なり、別に取り上げる必要性を感じたため、第4章でスクールバスについて説明をします。

第2部では、第1部で述べた通学交通の特徴を受けて、通学手段を確保するための各所の取り組みを挙げていきます。

地方を中心に公共交通の利用は芳しくない所が目立ちます。 また、近年の規制緩和の流れを受けて、2000(平成12)年には鉄道事業、2002(平成14)年にはバス事業に対して、 需給調整規制が廃止されました。 まずは第1章でこの需給調整規制の廃止について述べます。 それより前から各地で見られるようになった自治体が民間にかわって運行しているバスについては第2章で言及します。 また、一般的に鉄道は安い、バスは高いと言われている通学費ですが、実態はどうであるかを第3章で詳しく分析します。 そして第4章で、今ある通学手段を確保するために各地でなされている取り組みを紹介します。

以上簡単に今回の研究を振り返ってみましたが、詳しくは本文に目を通していただきたいと思います。

この研究誌はご覧の通り簡易製本(手作り)となっておりますが、これは1人でも多くの方に当鉄道研究会の研究活動、 および取り上げる研究対象に関心を持っていただけるよう、研究誌の無料配布を続けているためです。 約半年間の研究の総決算としてまとめ、印刷・製本と部員が総がかりであたってきました。 ぜひご一読の上、ご意見・ご感想を当鉄道研究会までお寄せください。

2002年11月2日 一橋大学鉄道研究会 部長 和田剛


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Last modified:2008/9/23

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